| みなさま、
暑い夏が終わって、やっと秋らしくなってきましたが、 いかがお過ごしでしょうか。
青空が広がり、 柿の実が色づき、 金木犀の甘い香りが漂い、 藤沢の街ではアートブックフェスティバルが開かれています。 昨日は江ノ島で夏の終わりを告げるような花火大会。 今年の夏は長かったので、これで本当に秋が来たようでほっとしています。
今回は次の話題をお伝えします。 8月 ダーニング再び 9月 TCWの研究会 10月 秋の庭
お時間のあります時に、ゆっくりお読み頂けましたら幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<八月 ダーニング再び>
去年の夏「INVC湘南だよりNo.55」に「ダーニング」のことを書きましたが、 今回はさらにハマってしまっている「ダーニング」について再び。
暑い夏の最中、鎌倉・佐助の坂を登るのは大変だからと思ってはいたものの、 ワークショップの魅力には勝てずに参加したのが、「八月のダーニングワークショップ」。
今回のワークショップがスペシャルだったのは、いつも教えてくださる講師の先生に加えて このダーニングの活動を牽引してこられた野口光さんもおいでになり、 ダーニングとの出会いや活動についてお話しくださるトークが組み込まれている点。
WSを開催しているギャラリーのオーナーが興味深いお話を引き出して下さいました。 野口さんは日本の美大を経てイギリスでテキスタイルデザインを学ばれ、 その後イギリスでスタジオを開設して長く活動されていました。 南アフリカに住まいを移されたこともあり、 南アフリカで取れる美しく彩色されたモヘア糸などを使ってダーニングをされています。
ダーニングの魅力は 「繕う所を美しい糸で刺して、隠すのではなく見せること」、 「その見せ方が抽象画のように自由なこと」 「刺し方がシンプルで簡単なこと」でしょう。
だいたい繕わなくてはならないような衣類は、 着心地が良くて着る頻度が高いために生地が弱ってしまうわけで、 私の場合「できればまだ着ていたい」 「この肌触りを手放したくない」と思うものが多いのです。
ここで、ダーニングが登場すると 「捨てなくて良い」 「美しく生まれ変わって新しい感覚で着られる」というメリットが。
繕う箇所は小さい部分が多いので、 1箇所ダーニングするのにそれほどの時間はかかりません。 しかも糸も僅かで済むので、 カシミヤやウール、リネンなどのちょっと値の張る糸でも使えます。
美しく彩色された糸を絵の具のように使って、 セーターやTシャツ、靴下などに自由にダーニングするとウキウキします!
最近はMUJIの「ReMUJI」プロジェクトや パタゴニアの「WORN WEAR」プロジェクトなど、 自社の衣類を回収して、染め直しや洗い直し、修理などを施し 再商品化する企業が増えつつあります。
ダーニングはこのようなSDGsなプロジェクトの一環としても歓迎されます。 先日も奈良にできたという「世界最大の無印良品」のお店で ReMUJI企画に因むダーニングワークショップをされていました。
また、野口光さんは当初から海外に拠点を置かれて活動されていたことから、 ワークショップも国際的! 夜の10時に世界に向けてダーニングのインスタライブが始まったりします。 ご自身で英語と日本語で説明しながら、手元で実際にダーニングしてくださるので、 その手の動きに思わず魅入ってしまいます。
海外のアーティストたちとのネットワークも広く、 来年の初めには海外の二人のアーティストと共に 三日間に渡るZoomを使った催し物が企画されています。
世界の人が同じ時間を共有して手仕事をしながら集えること、 こういう平和な時間が少しでも世界に広がることで、 心が穏やかになれる人が増えて欲しいと願います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<九月 TCWの研究会>
九月の初めにZoomで開催された 「TCW (Trans-Culturality Workshop)」の第13回研究会に参加しました。
TCWというのは、 立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科で長年教えてこられた久米先生が、 修了生たちのために「学びの継続の場」として設けられた研究会です。 第13回目に当たる今回の講師は、同研究科で五年ほど教えておられた川嶋直先生。
川嶋先生のご専門は「環境教育」。 八ヶ岳・清里にある公益財団法人キープ協会にて環境教育事業を立ち上げられ、 一貫して自然体験やアナログコミュニケーションを中心とした学びや 対話の場づくりに取り組まれてこられたそうです。
この日の講演会、前半は自然体験プログラムの紹介、 後半は教育におけるコミュニケーションのあり方がテーマとなりました。
まず、前半の清里の森の中で実践されてきた「自然体験プログラム」として 次のようなアクティビティを映像と共にご紹介くださいました:
葉っぱを拾ってその葉っぱでジャンケンをする「葉っぱっぱ」、 紙で眼を作り木の幹や枝を顔に貼って擬人化してみる「めだまっち」、 小さな人形を森の中に置いて物語を創る「森人の大冒険」、 木漏れ日を紙に写して光の芸術を眺める「木漏れ日キャッチ」、 ガラスの板に映る森の木々の様子を見ながら歩く「スキヤキハイク」、 二つの鏡を立てた間に木の葉や木の実を並べて眺める「森の万華鏡」、 小さな透明シートの枠に葉っぱや花などを挟み空に掲げて見る「森のスライドショー」、 草の上に寝転がって森や空を見る「森の映画館」、 花や葉をモチーフに描く「マイ家紋」。
こういうアクティビティを森の中ですると、 何気なく見ていた落ち葉や花に意識が向いて、 その個々の美しさに心が惹かれるのだろうと感じました。
私も海岸の砂の上に寝転がって波の音に耳を傾ける「海の映画館」や 川の土手に寝転がって虫の羽音を聴く「川の映画館」は経験ありだなあと。 また、家紋にすることは思いつきませんでしたが、 葉や花を描こうとするとじっとその姿を見ることになるので、 細部がより美しいと感じられるように思います。 万華鏡やスライドショーの映像もなかなか美しく、心惹かれました。 後半はコミュニケーションのあり方のお話。 コミュニケーションはキャッチボール、教育は引き出すことと言われる川嶋先生。
ご自身が考案された「KP法(紙芝居プレゼンテーション)」で講演をなさいました。 KP法とは、A4の紙とホワイトボード、マグネットを使って行う 「シンプルなプレゼンテーション&思考整理法」とのこと。
キーワードや短い文が手書きされた紙をホワイトボードに貼りながら説明をされます。 情報は多すぎではいけないと言われ、文字も大きく、ポイントを絞った文が提示されます。
10枚ほど紙が貼られてホワイトボードが一杯になると、 スタッフがスクショして、後で配布していただけます。
これに似た講演の仕方は私もよくしていたことを思い出します。 私の場合は、配布用のレジュメをまず作り、 レジュメを項目ごとにハサミで切って、キャンパスカードに貼ります。 まあなんとアナログなこと!
専修大学でのゲスト講演の時には、 文字ばかりにならないようイラストを描いて、色鉛筆で色をつけ、 一枚ずつOHPで見せて話をし、次々めくっていくのでまさに紙芝居式。
学生たちは決して上手とは言えない私の絵と色使いを 楽しみながら毎年講演を聞いてくれました。
Zoomで開催された今回の研究会、沖縄から北海道まで全国から20名ほどが集いました。 ご講演後はブレイクルームを使ったディスカッションを経て全体会へと続き、 なかなか充実した内容でした。 80代に入られたとは言え、お元気な久米先生にもお目にかかれて大変うれしい時間でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<十月 秋の庭>
やっと秋がきました! 秋は来ないのじゃないかという声も聞かれたほど、暑くて長かった今年の夏。 まだ日差しは強い日もありながら、風は秋風、ひんやりと気持ちがいい。
青空が広がり、柿の実が色づき、花水木も赤い実をつけ始めました。 金木犀の花も緑色からオレンジ色へと日々変化し、開花は真近。 甘い香りが漂うのももう直ぐです。
我が家の庭では大豆の収穫が始まっています。 若干小粒ながらもふっクリと充実した実で、なかなか美味しい!
塩茹でしてそのまま頂いたり、炒めご飯に入れたり、おかずと一緒に煮たり、 ゼリーのお菓子に入れたりと連日「豆の甘さ」を満喫しています。
枝豆がもっと硬くなって茶色の大豆になるまで置いておく枝もあります。 こちらはもうしばらくしてから大豆として収穫し、 我が家で手作りしている納豆にしたり、時々作るお豆腐にしたりします。
大豆の収穫後は、麦を植えます。 冬になると芝生は茶色になってしまうけれど、 麦の青々とした緑色は、冬の間殺風景になりがちな庭に潤いを与えてくれます。
今年はヘチマも収穫できました。 地ばいのヘチマが庭にどんどん蔓を伸ばし、黄色い花をいくつも咲かせましたが、 なった実は二つ。でもとても大きく立派です。
これを乾燥させて、ヘチマタワシにします。 ヘチマは優れもので、油っぽいお皿でも洗剤なしできれいに油分を取ってくれます。 我が家のキッチンではヘチマが大活躍なので、へチマを収穫できたのはうれしい事でした。
柑橘系は八朔とカボスの木がありますが、ここのところ八朔は不作。 なかなか実をつけてくれません。数年前には一度豊作だったのですが・・・。
一方のカボスの木は大きくなって、毎年たくさん実をつけます。 この時期の実は緑色で、緑色の葉に隠れていますが、次第に黄色味を帯びてきます。 一つひとつ丁寧に切り取って、お料理に使います。
秋から冬にかけては赤く色づく実が増えてきますが、 今の時期はまだ真っ赤に至る途中という感じ。
ハナミズキの木は、紅葉が始まっていて オレンジ色を帯びた葉の中心に小さな赤い実がいくつも。 白っぽいのは花芽です。
南天は実をたくさんつけていて、枝が重たそう。 実の色はまだ緑から赤みを帯びるまでの間のグラデーションです。
まさきの実も赤くなりますが、今はまだ淡い緑色。千両もまだこれからですね。 寒くなるにつれて、段々と庭に赤い実が増えてくるのが楽しみです。
庭のハーブで元気なのはローズマリーとレモングラス。 ローズマリーは頂いた枝を挿し木したものですが、とても元気に枝を伸ばし、 今は紫色の小さな花が無数に咲いていていい香りを放っています。
ローズマリーとレモングラス、それに枇杷の葉やオーツ麦の実など 我が家の庭にできたものをブレンドして、ハーブティーを楽しんでいます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それでは、今号はここまで。 ご感想、ご近況など、いつでもお待ちしております。 ytprimrose09@gmail.com 世界の平和、日本の平和を祈る日々です。 戦地や被災地の方々の日常が一日も早く戻りますように、 穏やかな暮らしが戻ってきますように。 世界や日本の混乱が収まりますように。
また、次号「冬の湘南だより」でお会いしましょう! しばらくは心地よい秋の風情を楽しめますように。 どうぞくれぐれもお身体ご自愛くださいませ。
INVC暮らしとアートの研究所 https://nonverbal-invc.com 東山安子
|